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「あー、もう、最悪!」 街中を一人で走りながら、叫んだ。 周りの人たちがぎょっとした顔でこちらを振り向いたけれど、それに構っている場合じゃない。 雨の中、頑張って傘を差しつつ、走る。 ……今日は本当、ついてない。 まず、友達と遊びに行く約束をしていたのに、目覚まし時計が壊れていたらしく寝坊。焦って飛び起きたら布団につまずいて、タンスで頭を打った。 次に、服を前後逆に着てしまい、慌てて脱ごうとしたらビリッと嫌な音。仕方なく他の服を引っ張りだす羽目になった。その間に焼いていたパンは、問答無用で焦げた。 更に、靴箱を開けたら靴が降ってきて、片付けるのに苦労した。しかも、ブーツのチャックが噛んでしまい、ちゃんと履くのに時間がかかった。 極め付けに、外に出たら雨が降っていた。 「ホント、最悪だー……」 朝からなにやってるんだろう、私。 約束している友達も、きっと呆れて─── 「って、連絡してない!」 寝坊したことも遅れることも、何も連絡していないことに気付いた。 慌ててポケットから携帯電話を取り出す。時間を確認したら、約束の時間を20分は過ぎていた。やばい。やばすぎる。絶対に怒られる。 友達の番号を探して、恐る恐る通話ボタンを押した。 『───はい、もしもし』 「私! ごめん、寝坊した! 今向かってるからもうちょっと待ってて!」 『ああ、やっぱり? 雨降ってる日っていつも寝坊するよね、アンタ』 呆れたような笑い声に、拍子抜けする。 「……え、そうなの?」 『うん。今朝起きたら雨降ってたから、今日は遅れてくるだろうなと思って、本持ってきた。ゆっくり来ていいよ?』 「あ、ありがと……でも、もう着くわ」 ちょうど、待ち合わせしていたファミレスの前まで来ていた。 『そう、ならいいか。じゃ、切るね』 プツ、と通話が切れた携帯電話をポケットにしまい、役立っていなかった傘を畳みつつ店に入る。 店内を見回すと、窓際に座っている友人が、こちらに向かってひらひらと手を振っている。 手を振り返そうとしたら、傍の店員さんとぶつかって飲み物を零させてしまった。 ……まったく、今日は本当、ついてない。 * 『雨』『靴』『携帯電話』
by fubuki-snow
| 2009-01-31 21:51
| SS
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