「ねぇ、サンタさんって、ほんとにトナカイが引いてるソリで来るの?」 弟が唐突にそんなことを聞いてきた。 「へ? どういうことだ?」 怪訝に思って聞き返してから、ああコイツもとうとう信じなくなったのかなと思い当たる。僕も確か、今の弟ぐらいの歳で現実に気付いたはずだ。 しかし、返ってきた言葉はそうではなかった。 「だって、一日で世界中回るんだったら、トナカイとソリじゃ間に合いそうにないよ」 「……まあ、確かに」 どうやらコイツはまだまだ子供でいるらしい。 それにしても子供って純粋だなぁ、などと柄にもなくしみじみと思う。 「ねぇ、ほんとは何に乗って来るの?」 「何だろうな。ジェット機にでも乗ってるんじゃないか?」 「ジェット機!?」 僕のテキトーな発言に、弟は目を丸くした。 それから、ぱあっと顔を輝かせる。 「そうかもしれない! だったらすごくカッコいいなぁ、サンタさん」 ……サンタクロースに「カッコいい」という感想を抱く子供も珍しいんじゃないだろうか。 まあ、面白いから訂正はしないが。 「そういえば、今年はサンタさんに何お願いしたんだ? 去年は自転車だったよな、確か」 「うん。今年はね、ゲームソフトにしたんだよ!」 「へぇ、何の?」 「それは秘密だもん。サンタさんだけが知ってるの」 「あはは、そっか」 手紙にでも書いたのだろう。 親たちは今頃、ゲームソフトを少しでも安く買える場所でも探しているのかもしれない。サンタクロースを信じているコイツに悟られないようにしながら、こっそりと。 ……親というのも意外と大変そうだ。 でも、と弟に目をやる。 そこにあるのは、とても楽しそうな笑顔。 こんなに幸せそうなのだから、きっとそれでいいのだろう。 「ちゃんと来てくれるといいな、サンタ」 「うんっ!」 弟は元気良く頷いた。 *
by fubuki-snow
| 2008-11-30 21:52
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